小論文シリーズ17 「聴く」
- 河野正夫
- 2025年6月21日
- 読了時間: 3分
【小論文課題】
「聴く」という言葉から想起されるテーマを設定し、あなた自身の具体的な体験と教育観とを関わらせて論述しなさい。
(600字以内)

【小論文】
「聴く」という行為は、単に相手の言葉を耳に入れるだけでなく、その背後にある感情や思いに寄り添い、受け止める姿勢を含んでいる。教育現場において「聴く力」は、児童の自己肯定感を育み、信頼関係を築くための根幹であると考える。私は講師として、児童の心に丁寧に耳を傾けることを何よりも重視してきた。
ある年、小学五年生の学級で、落ち着きがなく頻繁に友人とトラブルを起こす児童がいた。当初は注意や指導で対処していたが、根本的な改善には至らなかった。私は放課後にその児童と向き合い、落ち着いた環境でじっくり話を聴く時間を設けた。初めはうつむき、言葉も少なかったが、私は無理に話させようとはせず、沈黙を含めたその子の存在を受け止める姿勢を貫いた。数日後、児童は家庭での孤独や不安、誰にも相談できないもどかしさを語り始めた。話すことを通して徐々に表情が和らぎ、日常の中でも友人との関わり方に変化が見られるようになった。学級全体の雰囲気も、彼の変化に呼応するように温かさを帯びたものとなった。
この経験を通して私は、「聴いてもらえている」という実感が、児童にとって心の安定や自尊感情の回復に直結することを学んだ。今後も私は、「聴くこと」を学級経営や生徒指導の土台とし、児童が安心して自己表現できる関係性を築いていきたい。
【執筆の観点】
1. 小論文の主題設定の根拠
本設問は「聴く」という語の解釈と教育実践を接続することが求められており、教育的信念の具体性と経験への結びつきが問われます。
「聴くこと」を単なる行為ではなく、児童の心情や背景への受容姿勢と捉え、学級経営の基盤に関わるテーマとして設定しました。
このアプローチは、人格形成や関係性構築に関心を持つ採用側の評価軸にも適合します。
2. 論述展開と具体例の活用方針
序論では「聴く」の定義と教育的意義を明確にし、本論では講師経験に基づいたエピソードを提示しています。
ここでは、児童の変化や学級全体の反応を具体的に描写することで、聴く姿勢がもたらす波及効果を論じました。
結論では教育的学びと今後の実践方針を明示し、単なる経験談で終わらない教師としての意思表明につなげています。
3. 論理構成と文体上の工夫
三段構成を徹底し、「理念→実践→意義と展望」の流れを保ちながら、すべての段落に教育的語彙を意識的に配置しました。
文体は「〜である」「〜と考える」など、押しつけにならない程度の断定表現を用いて説得力を担保しつつ、論理の跳躍を抑えて構成しています。
沈黙への対応や児童の反応の描写には動詞と副詞を精選し、実在感を高めました。
河野正夫



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