小論文シリーズ11 「日本の子供たちの自己肯定感」
- 河野正夫
- 2025年6月15日
- 読了時間: 4分
【小論文課題】
日本の子供たちの自己肯定感は、諸外国と比べて低いということが、過去の様々な調査結果から明らかになっており、新学習指導要領の前文においては、子供たちが自らのよさや可能性を認識することの重要性が示されています。本県では、新学習指導要領に基づきこれからの時代に求められる資質・能力を育成していくためには、子供たちの自己肯定感、自尊感情の向上を図っていくことが重要な課題であるとしています。あなたは、学級担任や授業担当者として、子供たちの自己肯定感を高めるために、どのように取り組みますか。児童生徒の育成すべき資質・能力について触れながら、具体的に800字以内で述べなさい。
(800字以内)

【小論文】
子供たちの自己肯定感が諸外国と比べて低い現状において、教育の中で自己の価値を実感できる場をいかに確保するかが重要な課題となっている。新学習指導要領の前文では「自己のよさや可能性を認識」することが強調されており、資質・能力の育成と自己肯定感の形成は密接に結びついている。これからの時代を生きる子供たちにとって、自己を肯定的に受け止める力は、あらゆる学びの基盤であるといえる。
私は、児童が「認められ、役割を果たし、成長を実感する」経験を積むことが、自己肯定感の基盤になると考える。そのためにまず、授業内で個の思考や意見を尊重する機会を多く設け、誰もが発言できる雰囲気をつくるよう心がけている。また、日々の評価では点数や結果だけでなく、取り組みや姿勢、思考の過程に着目して価値づけるコメントを返すようにしている。そうすることで、学びそのものに前向きな感情が生まれ、児童自身が「自分はできる」「自分にも価値がある」と思えるようになる。
加えて、係活動や行事などの場面で、一人ひとりが役割を担い、他者と協力して何かをやり遂げる経験も重視している。成果そのものよりも、互いに認め合い、支え合いながら歩んだ過程をふり返ることに意味がある。こうした活動は、社会性や協働性といった資質の育成と同時に、「自分も仲間の一員として価値ある存在だ」という感覚を育むことにつながる。また、トラブルや失敗を成長の契機として捉え直す場面づくりも、子供たちの心の柔軟性を養ううえで効果的である。
自己肯定感の向上には、学級という日常的な場における人間関係の質が何よりも影響する。だからこそ私は、児童相互の承認関係を大切にしながら、学級づくり・授業づくりの両面で、児童の内面に働きかける実践を積み重ねていきたい。そして、一人ひとりが「かけがえのない存在」であるというメッセージを、日々の関わりの中で伝え続けていく。
【執筆の観点】
今回の小論文では、自己肯定感の低さという社会的課題に対して、児童の資質・能力の育成と関連づけながら、学校教育が果たすべき役割を明確に論じることを意識しました。
特に、「自己肯定感はどのように育まれるか」という構造的理解を基に、実践との接続を丁寧に示すことを重視しています。
序論では、新学習指導要領の前文と本県の教育方針を的確に参照し、課題の重要性と背景を論理的に位置づけました。
これにより、論点を抽象的な「自己肯定感の必要性」にとどめず、資質・能力の育成と結びついた教育的課題として具体化しています。
本論では、「認められる経験」「役割を果たす経験」「成長を実感する経験」という三つの観点を軸に、授業や学級経営における取り組みを具体的に提示しました。
単なる経験の羅列ではなく、児童の内面の変容プロセスを論理的に説明する構成としています。
また、社会性・協働性といった資質の言及を通して、自己肯定感の向上と育成すべき能力の接続も意識しました。
結論部では、日常的な人間関係の質の重要性を再確認し、教員としての教育実践の方向性を明示しました。
最後の一文では、理念的な言葉を教師の姿勢として定着させることで、論旨の締めくくりに説得力と温度感を持たせています。
全体として、論理の一貫性と実践的具体性の両立を図りながら、教育的理念と日々の実践を往還的に結びつけることを意図しました。
今後、小論文を執筆する際には、「抽象的課題 → 理念的整理 → 実践的方策 → 教師の決意」という構造を意識することで、論文の完成度を高めることができます。
河野正夫



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