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【養護教諭のための面接戦略】第8回:保健指導・健康教育の在り方

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 1 日前
  • 読了時間: 12分

【養護教諭のための面接戦略】(全20回連載)


第8回:保健指導・健康教育の在り方



1.はじめに――養護教諭の教育職としての本領



養護教諭は教育職です。


医療職ではありません。


この基本を踏まえると、養護教諭の仕事の中核には、子どもを教育する営みがあります。


その中核的な教育実践が、保健指導と健康教育です。


ところが、面接で「保健指導・健康教育をどのように進めますか」と問われたとき、多くの受験者が表面的な回答に終わってしまいます。



「保健だよりで情報を発信します」


「保健の授業で健康について教えます」


といった、単なる情報提供のレベルにとどまった回答では、教育職としての養護教諭観の浅さが露呈してしまいます。


保健指導と健康教育は、単に健康に関する知識を伝えることではありません。


子どもが自分の心と体に向き合い、健康課題を主体的に解決する力を育てる、教育的営みです。


知識を教えるだけではなく、態度、価値観、判断力、行動力までを育てる総合的な教育実践です。



第8回では、保健指導と健康教育の意味、両者の違いと関連、具体的な実践の在り方、そして面接での語り方について説明します。





2.保健指導と健康教育の違いと関連



まず、保健指導と健康教育という言葉の意味を整理します。


両者は混同されがちですが、それぞれに固有の意味があります。



★保健指導



保健指導は、学校保健安全法第9条に明確に位置づけられた養護教諭の職務です。


健康相談や健康観察を通じて児童生徒の心身の状況を把握し、健康上の問題があると認めるときに行う個別または集団の指導を指します。



けがの予防、


生活習慣の改善、


心の不調への対応、


思春期の変化への向き合い方


など、



対象児童生徒の具体的な健康課題に即して行う指導です。


日常的・継続的に展開されるのが特徴です。



★健康教育



健康教育は、より広い概念で、学校教育全体を通じて行われる、健康に関する教育を指します。



教科としての保健、


特別活動、


総合的な学習の時間、


道徳科、


各教科の関連単元


など、



教育課程全体に位置づけられます。


健康な生活を営むための知識・態度・行動を、計画的・系統的に育てる教育活動です。



両者の関係を整理すると、保健指導は具体的・個別的・課題対応的な側面が強く、健康教育は計画的・体系的・教育課程的な側面が強いと言えます。


両者は対立するものではなく、互いに補い合う関係にあります。


学校保健活動全体は、この二つを車の両輪として展開されます。



養護教諭は、保健指導の主たる担い手であると同時に、健康教育の中核的な推進者です。


教科の保健の授業を担当する保健体育科教員や学級担任、栄養教諭などと連携しながら、学校全体の健康教育を組織する立場にあります。



3.保健指導の場面と実践



保健指導が展開される代表的な場面を整理します。



★日常的な保健室での個別指導



保健室を訪れた児童生徒に対して、その場で行う個別指導です。


けがをした子どもへのけがの予防指導、頻回来室の子どもへの生活習慣の見直しの助言、心の不調を訴える子どもへの自己理解の促し、思春期の体の変化への戸惑いへの応答など、その場の状況に応じた個別的な指導が日々展開されます。



★健康診断後の事後指導



健康診断の結果を踏まえた個別指導は、保健指導の重要な場面です。



視力低下が見られる子どもへの生活習慣の見直し、


肥満傾向のある子どもへの食生活の指導、


う歯のある子どもへの歯みがき指導


など、



診断結果に基づく具体的な指導が行われます。



★集団保健指導



学級、学年、全校など、集団に対して行う保健指導です。



学級活動の時間を使った保健指導、


朝会・集会での話、


感染症流行期の予防指導、


災害時の心のケアに関わる指導


など、



計画的に行われます。



学級担任と協働して展開することが多くあります。



★特定の健康課題への組織的指導



食物アレルギー対応、


エピペンの使用、


薬物乱用防止、


性に関する指導、


SOSの出し方教育


など、



特定の課題に対して組織的に行う保健指導です。


外部講師の招聘、教材の準備、関係機関との連携など、計画的な準備のもとで実施されます。



★保護者・教職員への保健指導



児童生徒だけでなく、保護者や教職員も保健指導の対象となります。



保護者会での健康教育、


教職員向けのアレルギー対応研修、


エピペン使用研修、


心肺蘇生研修


などは、



養護教諭が中心となって企画・実施します。


これらの場面で、養護教諭は教育職としての専門性を発揮します。



4.健康教育の体系と養護教諭の役割



健康教育は、学校の教育課程全体に位置づけられます。


学習指導要領の改訂を経て、健康教育の重要性は一層強調されています。



★教科の保健の指導



小学校体育科の保健領域、


中学校・高等学校保健体育科の保健分野・科目保健



で、健康に関する系統的な指導が行われます。


養護教諭は、教科担当ではありませんが、ティーム・ティーチングの形で参加することができます。


専門的知見を生かした授業への参画は、養護教諭の重要な活動の一つです。



★特別活動における健康教育



学級活動、


児童会・生徒会活動、


学校行事


において、健康に関わる内容が扱われます。


健康診断、避難訓練、運動会、修学旅行などの行事も、健康教育の機会として位置づけられます。



★総合的な学習の時間における健康教育



健康をテーマにした探究的な学習が、総合的な学習の時間で展開されることもあります。



地域の健康課題、


生活習慣病予防、


心の健康、


性教育


など、



テーマ別の学習に養護教諭が関わることができます。



★道徳科における健康教育



道徳科では、



生命の尊重、


節度・節制、


心身の健康


など、



健康に関わる内容が扱われます。


養護教諭の専門性が生かせる場面です。



★特別な指導機会



学校保健委員会、


保健集会、


児童・生徒保健委員会の活動


など、



養護教諭が直接的に関わる健康教育の場があります。


これらは、養護教諭が中心的に企画・運営する場であり、独自の教育実践を展開できます。


全校的取組としての健康教育 学校保健計画に位置づけられた年間を通じた取組として、健康教育が体系的に展開されます。



健康月間、


保健週間、


感染症予防月間


など、



テーマ別の取組が行われます。



養護教諭は、これらの教育活動の中で、企画・調整・直接指導・助言・教材提供など、多様な役割を担います。


教科担当の教員、学級担任、栄養教諭、外部講師などと連携しながら、学校全体の健康教育を組織する立場にあります。



5.保健指導・健康教育を充実させる視点



保健指導と健康教育を効果的に展開するために、養護教諭が意識すべき視点を整理します。



★発達段階に応じた内容と方法



小学校低学年、中学年、高学年、中学生、高校生では、発達段階が大きく異なります。


同じ健康課題を扱う場合でも、発達段階に応じた言葉、教材、進め方を選ぶ必要があります。


発達段階を踏まえない一律的な指導は、効果が薄れます。



★知識・態度・行動の総合的育成



健康教育の目的は、知識を伝えるだけではありません。


健康に対する態度、価値観、判断力、行動力を総合的に育てることが目標です。


知識中心の指導から、子どもの主体性を引き出す指導への転換が求められています。



★子どもの主体性を尊重した指導



「教えてあげる」という上からの姿勢ではなく、子ども自身が考え、気づき、行動する力を育てる指導が望まれます。


問いかけ、対話、グループワーク、探究的な学習など、子どもの主体性を引き出す方法を工夫します。



★現代的健康課題への対応



時代とともに健康課題は変化します。



心の健康、


性の多様性、


メディアリテラシー、


自殺予防、


ヤングケアラー、


SNSに関わる課題


など、



現代的な課題への対応が求められます。


古い知識・古い指導法にとどまらず、最新の動向を踏まえた指導が必要です。



★家庭・地域との連携



健康教育の効果を高めるためには、家庭や地域との連携が不可欠です。


学校での指導内容を保健だよりで家庭に発信する、保護者会で話題提供をする、地域の専門機関と連携した指導を行うなど、学校だけで完結しない展開が望まれます。



★評価と改善の視点



保健指導・健康教育も、PDCAサイクルに基づく評価と改善が必要です。


指導の結果、子どもにどのような変化が見られたか、目標は達成されたか、改善点は何かを振り返り、次年度の計画に生かす視点が大切です。


これらの視点を意識した語りができると、保健指導・健康教育観の専門性の深さが伝わります。



6.面接回答の構成例



面接で「保健指導や健康教育をどのように進めますか」と問われた場合、回答時間は1分以内、320字以内が原則です。



推奨する構成は、次の四部構成です。



第一部・保健指導・健康教育の意義の認識(60字程度)


保健指導・健康教育が、子どもの心身の健康を支える教育的営みであることを冒頭で示します。



第二部・自分が重視する視点(80字程度)


発達段階への配慮、子どもの主体性の尊重、現代的課題への対応など、自分が特に重視する視点を述べます。



第三部・具体的な実践方法(130字程度)


日常的な保健室での個別指導、計画的な集団指導、教職員との連携など、具体的な実践方法を示します。


一つか二つのテーマを取り上げて具体化することが効果的です。



第四部・目指す子どもの姿と決意(50字程度)


保健指導・健康教育を通じて育てたい子どもの姿を示し、決意で締めくくります。



回答例を示します。



「保健指導と健康教育は、子どもが自分の心と体を大切にし、健康課題を主体的に解決する力を育てる教育的営みであると考えています。私は、発達段階に応じた内容と、子どもの主体性を引き出す方法を大切にします。日常的には、保健室を訪れた児童生徒一人ひとりへの個別指導を丁寧に行い、集団場面では、学級担任と協働して計画的な保健指導を実施します。SOSの出し方教育や生活習慣の見直しなど、現代的課題にも積極的に取り組みます。子どもたちが、自らの健康を主体的に守り育てる力を身につけられるよう、教育職としての養護教諭の役割を果たしていきたいと考えています。」


この回答例は約268字です。



7.具体的な実践テーマの例



面接で具体性を持たせるために、保健指導・健康教育の実践テーマを引き出しとして用意しておくことが有効です。


代表的なテーマを整理します。



生活習慣に関わる指導


睡眠、食事、運動、


メディアとの付き合い方、


生活リズムの整え方


など、



健康な生活の基盤を育てる指導です。


発達段階に応じて、具体的な行動目標を子ども自身が立てる学習活動が効果的です。



★心の健康に関わる指導



ストレスマネジメント、


感情との向き合い方、


自己肯定感を育てる活動、


SOSの出し方教育、


援助希求行動の促進


など、



心の健康を育てる指導です。



★性に関わる指導



発達段階に応じた包括的性教育、


思春期の体と心の変化、


人間関係と性、


性的同意、


性的多様性への理解


など、



現代的に重要性が増している領域です。



★感染症予防に関わる指導



手洗い、


うがい、


咳エチケット、


感染症の正しい知識


など、



感染症対策に関わる指導です。


新型コロナウイルス感染症の経験を踏まえた指導が求められています。



★けが・事故予防に関わる指導



安全な行動、


けがの予防、


応急処置の基礎、


自分の身を守る判断力


など、



安全教育としての側面を持つ指導です。



★薬物乱用防止教育



たばこ、


アルコール、


違法薬物、


市販薬の乱用


など、



薬物に関わる教育です。


警察・保健所など外部機関との連携も視野に入ります。



★歯と口の健康に関わる指導



歯みがき指導、


う歯予防、


歯肉炎予防、


食習慣と歯の関係


など、



学校歯科医と連携した指導です。



★アレルギー疾患への理解と対応の指導



アレルギー疾患を持つ子どもへの理解、


アナフィラキシー対応、


エピペン使用


など



の指導です。



教職員研修としても重要なテーマです。



★災害時の健康管理に関わる指導



災害時の心のケア、


衛生管理、


けが・病気の予防


など、



防災教育の健康面の側面です。



これらのテーマの中から、自分が深く語れるものを引き出しとして用意しておきます。


追加質問で「具体的な指導例を教えてください」と問われた際に、具体的な内容を語れる準備が必要です。



8.避けるべき語り方



保健指導・健康教育を語る際に避けるべき典型例を整理します。



★情報発信に偏るパターン


「保健だよりで健康情報を発信します」。


一方向の情報発信だけでは、教育的営みとしての保健指導・健康教育の本質が見えません。



★知識伝達のみに留まるパターン


「健康に関する正しい知識を子どもに伝えます」。


知識を教えるだけでは、態度や行動を育てる教育的視点が見えません。



★画一的な指導を前提とするパターン


「全校で統一した健康指導を行います」。


発達段階や個別性への配慮が見えません。



★養護教諭が単独で行う前提のパターン


「私が中心となって、保健指導を実施します」。


学級担任や教科担当との連携の視点が欠落しています。



★抽象的な姿勢表明で終わるパターン


「子どもに寄り添った保健指導を心がけます」。


具体性に欠け、何をするかが見えません。



★医療的視点に偏るパターン


「病気の予防について、医学的な知識を教えます」。


教育職としての視点が見えません。



これらの典型例を避け、教育的意義の認識・発達段階への配慮・子どもの主体性の尊重・具体的実践・連携の視点を備えた語りを心がけてください。



9.おわりに



保健指導と健康教育は、養護教諭の教育職としての本領が発揮される領域です。


単なる情報提供や知識伝達ではなく、子どもが自らの健康を主体的に守り育てる力を育てる教育的営みであることを、面接で明確に示すことが大切です。


保健指導の日常的・個別的な側面と、健康教育の計画的・体系的な側面の両方を理解し、自分なりの実践構想を語れることが、養護教諭の専門性の深さを示します。



発達段階への配慮、


子どもの主体性の尊重、


現代的課題への対応、


家庭や教職員との連携


など、



多角的な視点を盛り込むことで、面接官の心に届く回答が完成します。



第7回で取り上げた最近の健康課題と、第8回の保健指導・健康教育の在り方は、密接に関連しています。


健康課題への認識が、保健指導・健康教育の内容を方向づけます。一貫したストーリーで両者を結びつけて語れることが、面接全体の説得力を高めます。



次回は「第9回:心のケアの重要性」を取り上げます。


現代の養護教諭にとって、ますます重要性を増している心のケアについて、詳しく説明します。




河野正夫




 
 
 

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