【第7回】場面指導的質問・想定問答における論理的展開の型とその応用。【10回以上不合格だからこその教採面接講座】(連載シリーズ)
- 河野正夫
- 2025年6月12日
- 読了時間: 6分
【第7回】場面指導・想定問答における論理的展開の型とその応用
PREP法・SDS法・STAR法を用いて、「即興でも通用する語り」を設計する
はじめに:
「内容はあるのに伝わらない」受験者の壁
教員採用試験の面接、特に場面指導的質問や想定問答の場面において、多くの受験者が直面するのが、「話すべき内容は頭の中にあるのに、いざ口にすると伝わりにくい」「話の筋道が見えず、論理性が弱いと指摘された」という壁です。
この問題は、知識や経験の不足ではなく、「話の構造」を組み立てる力、すなわち論理的展開の設計力の欠如に起因しています。
場面指導的質問では、「突然教室で何かが起きた」という状況設定のなかで、即座に自分の判断・対応・考え方を筋道立てて語る力が試されます。
想定問答もまた、即興性と論理性の両立が求められる対話の場です。
そこで本稿では、面接における語りを「即興でも構造的に展開できる力」として再定義し、PREP法、SDS法、STAR法などの汎用的フレームワークを活用して、「話の組み立て方」を戦略的にトレーニングする方法を解説します。

面接における論理展開とは「構造の明示」である
面接官は、受験者の話を「内容」だけで評価しているわけではありません。
むしろ、「この人の思考は、場面に即して整理されているか」「情報が受け手に届く順序で提示されているか」「論点がぶれていないか」といった、話の構造と論理の運び方を通じて、その人物の判断力・対人対応力・自己理解の成熟度を測ろうとします。
このとき重要なのは、思考そのものを洗練させることではなく、それを「聞き手にとって処理しやすい順序で提示する」という語りの設計力です。
つまり、論理性とは論理的な内容を持つことではなく、「筋道を聞き手に開示すること」によって生まれる対話的な信頼の形なのです。
PREP法:結論重視型の語り方
PREP法は、
Point(結論)→Reason(理由)→Example(具体例)→Point(再主張)
という流れで構成される論理展開法です。
教員採用面接においては、短時間で主張を明確に伝え、論拠を添えるのに適しています。
たとえば、「あなたはどんな授業をしますか」という質問に対しては、
「生徒の主体性を重視した授業を行います(Point)」と結論をまず提示し、
「知識の定着には受動的な学習よりも、自ら問いを立てる経験が重要だからです(Reason)」と理由を続けます。
そして、「実際に教育実習では、グループで課題解決型の探究活動を取り入れた授業を行いました。そこでは、生徒同士の意見交換が活性化し、理解が深まったと感じました(Example)」と具体例を添え、
「このように、生徒が主体的に関わる授業を今後も追究していきたいと考えています(Point)」と再主張して締めくくります。
PREP法の強みは、結論を最初に提示することで話の軸が明確になる点にあります。
面接官は最初の時点で「この人が何を言いたいのか」を把握でき、その後の理由や具体例を安心して聞くことができるのです。
SDS法:課題解決型の説明法
SDS法は、
Summary(要点)→Details(詳細)→Summary(再要約)
という形式で、主に説明的な語りや報告的回答に向いています。
PREP法に比べて、やや全体を俯瞰するような展開になります。
たとえば、「授業づくりで大切にしていることは何か」という問いに対して、
「私は、生徒にとって“見通しが持てる構成”を大切にしています(Summary)」と端的に述べた後、
「たとえば、授業冒頭で『今日の学習の目標』『活動の流れ』『達成目標』を提示し、生徒が授業の全体像を把握できるようにしています
(Details)」と続けます。
最後に、「このように、学習者にとって安心して取り組める“予測可能な授業構造”を重視しています(Summary)」と再度要点を確認します。
この方法は、整理された語りを構成しやすく、情報の分量が多くても論点を見失わずに伝えることができます。
特に、場面指導的質問や実践の報告などで効果的です。
STAR法:行動と結果を語る構造
STAR法は、
Situation(状況)→Task(課題)→Action(行動)→Result(結果)
という展開で、特に場面指導のような具体的行動を問う設問に適しています。
評価者にとっては、「実際にどう行動したか」と「その結果として何が起きたか」を整理して理解できるため、非常に評価しやすい構造です。
たとえば、「授業中に騒いでしまう生徒への対応をどうするか」と問われたときに、
「ある授業で、生徒が友人と大声で私語を続けている状況がありました(Situation)」と状況を説明し、
「そのままでは授業が成立せず、周囲の生徒の集中も妨げられていたため、静かにさせる必要がありました(Task)」と課題を明示します。
「私はまず近づいて視線を送り、その後休み時間に個別に声をかけ、何があったかを聞きました(Action)」と行動を語り、
「結果として、本人は前の授業のことで気分が落ちていたことがわかり、その後は落ち着いて参加できるようになりました(Result)」と結末を語ります。
この形式は、場面対応力と共感的関与を伝えるのに極めて有効であり、単なる指導方針ではなく、「実際にどのような判断と行動をとったか」を再現性のある形で提示できる点に優れています。
話法の選択と組み合わせ:構造は使い分けが命
PREP法、SDS法、STAR法はいずれも便利な構造ですが、重要なのは「すべてを使うこと」ではなく、「問いに応じて使い分けること」です。
たとえば、理念や信念を語るときにはPREP法が、授業実践の説明にはSDS法が、行動に基づいた具体的指導場面の語りにはSTAR法がそれぞれ適しています。
また、一つの回答の中でこれらを組み合わせることも可能です。
PREP法で主張を提示し、STAR法でその具体的裏付けを語るといった設計は、非常に説得力のある語りを可能にします。
重要なのは、「どの話法を使うか」ではなく、「論点に合った順序で話すために、どの構造が有効か」を判断する視点を持つことです。
この視点こそが、即興的に話す場面でも破綻せず、落ち着いた語りを維持するための基盤になります。
おわりに:
構造化された語りは、即興性の土台になる
面接とは、あらかじめ用意されたスピーチを披露する場ではなく、予測できない問いにその場で応じる即興的対話の場です。
しかし、その即興的な語りを支えるのは、日々の準備によって内面化された「構造的思考」と「論理的展開の技術」です。
PREP法、SDS法、STAR法といった話法は、表現の型ではなく、思考を組み立て、他者に伝えるための“骨格”です。
話す内容に自信があっても、伝え方に構造がなければ、面接官には届きません。
逆に、内容に迷いがあっても、構造がしっかりしていれば、安心感と知的誠実さが伝わります。
次回は、このような構造的な語りに加え、これまでの「不合格経験」を資産としてどう活用するか、すなわち過去の挫折を戦略的に語り直す方法について論じます。
合格できなかった過去が、最も強い武器に変わる瞬間を迎える準備を、ここで整えておきましょう。
河野正夫



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