第1回:養護教諭の面接試験の全体像と合格の戦略:面接試験を「読み解き、備え、突破する」ための第一歩
- 河野正夫
- 6月7日
- 読了時間: 4分
はじめに:
なぜ面接が重要か
養護教諭の教員採用試験において、筆記試験と並び極めて重要な位置づけにあるのが「面接試験」です。
近年では人物評価の重視傾向が各自治体で強まりつつあり、筆記試験で高得点を取っていても、面接での評価が不十分であれば不合格となる事例が散見されます。
特に養護教諭は、他教科の教員以上に「個人の対応力」や「判断力」「コミュニケーション能力」が問われる職種であるため、面接は単なる質疑応答の場ではなく、「現場適応力を見極める場」であると理解することが重要です。

面接試験の構造を理解する
まず、養護教諭の面接は以下のような観点で構成されることが一般的です。
① 人物評価型面接(志望動機・自己PR・長所短所など)
このパートでは、受験者の人間性や教育観、コミュニケーション能力が評価されます。
質問自体は一般的なものが多いですが、回答内容には「なぜ養護教諭でなければならないのか」「現場でどう機能するか」という視点が求められます。
② 専門性確認型面接(保健室経営、健康教育、安全対応など)
養護教諭としての職務理解や、専門的知識と実践の結びつきを問う場面です。
「子どもが過換気症候群を起こしたらどうしますか」「災害時にどのように対応しますか」といった、実践的な質問がなされることが多くなっています。
③ 場面指導型面接(シミュレーション・対応判断)
児童生徒との関わりや教職員・保護者との連携の場面において、どのような対応を行うかが問われるシチュエーション型の質問です。
単なる正答ではなく、「判断根拠」「配慮の方向性」「結果への見通し」といった思考のプロセスも評価されます。
合格するための3つの戦略視点
面接試験を突破するためには、以下の3つの戦略が鍵となります。
1.「語るべき内容」を言語化する
面接においては、自分の経験や考え方を「他者に伝わる言葉」で語ることが求められます。
例えば「健康教育が大切です」と述べるだけでなく、「どのような意図で」「どんな子どもに対して」「どのような手法で行うか」を具体的に説明できるよう準備しましょう。
特に重要なのは、「エピソードのストック」です。
保育・看護・教育現場での体験から、自分の支援の特徴を語れるように、あらかじめ5~10個の事例を整理しておくことが効果的です。
2.「質問の意図」を逆算する
面接官の質問は一見、個人的な問いに見えますが、その背後には必ず「評価したい観点」があります。
たとえば、「あなたの長所は何ですか」という問いは、単に自己肯定感を聞いているのではなく、「その長所が学校現場でどう活かされるか」という実践的展望を見ているのです。
このため、すべての回答には「現場性」すなわち「学校でその考えや特性がどう活きるか」の視点を加えることが重要です。
3.「自分の軸」を定める
面接試験全体を通じて評価されるのは、「一貫性」と「信頼性」です。
志望理由、専門的質問への答え、場面指導への対応、いずれにも一貫した教育観・支援観が流れていると、面接官に強い印象を残すことができます。
したがって、自分の中に「支援における軸(例:寄り添い・安心・予防・協働など)」を明確に持ち、それをどの質問にも通底させて答える訓練が必要です。
養護教諭としての「人物評価」が重要視される理由
養護教諭の採用面接では、「知識」や「資格」だけではなく、「この人に命を預けられるか」「この人が子どもの人生に関わってよいと思えるか」という視点で評価が行われます。
特に、1人配置の多い養護教諭職においては、「判断の主体性」と「人間的信頼性」が他職種以上に問われます。
そのためには、自らの言葉で語る訓練が不可欠です。
原稿の棒読みやマニュアル的な応答ではなく、「今、ここであなたに語りかけている」という臨場感ある語りを意識してください。
おわりに:
第1回のまとめと次回の予告
本無料ブログ講座の第1回では、面接試験の構造と評価視点、そして合格のための基本的戦略を整理しました。
面接は、決して「その場しのぎ」では突破できません。
むしろ、自分の教育観と実践経験をどれだけ意味づけて語れるかが試される、深い自己表現の場です。
次回は、「養護教諭の専門性とは何か、法的・制度的枠組みから理解する」と題し、養護教諭の任務の正確な理解と、面接での語りへの接続のしかたを解説します。
河野正夫
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