第9回:キーワードで説得力を高める文章術。 「個別最適な学び」「協働的な学び」: 「具体例」を交えて使いこなす表現法。 【大学生のための教員採用試験 合格への完全ロードマップ(全20回)】
- 河野正夫
- 2 日前
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第9回:キーワードで説得力を高める文章術。
「個別最適な学び」「協働的な学び」:「具体例」を交えて使いこなす表現法。
【大学生のための教員採用試験 合格への完全ロードマップ(全20回)】
教員採用試験の論作文において、多くの大学生が陥る失敗が「最新の教育用語を羅列しただけの文章」になることです。
第8回で解説したように、中教審答申や学習指導要領のキーワードを把握しておくことは不可欠ですが、それらを単に文中に散りばめるだけでは、採点者に「言葉の表面だけをなぞっている」という印象を与え、かえって評価を下げる原因となります。
論作文で高い評価を得るためには、抽象的なキーワードを、現場での具体的な子供の姿や教師の働きかけへと結びつけ、論理的に記述する技術が必要です。
第9回では、現代の教育において最重要とされるキーワードを、説得力のある「生きた言葉」として文中で使いこなすための表現技法を解説します。

1. キーワードを「定義」から「具体」へ繋ぐ接続の技術
論作文においてキーワードを使用する際、最も重要なのは「定義の提示」から「具体的な実践」への橋渡しをスムーズに行うことです。
多くの学生は「個別最適な学びが重要である。私は算数の授業で……」と唐突に実践を書き始めますが、これでは論理の飛躍が生じます。
① キーワードを分解して記述する
例えば「個別最適な学び」を用いる場合、その要素である「指導の個別化」と「学習の個性化」を意識的に使い分けることで、専門性の高さをアピールできます。
表現例:
「子供一人ひとりの習熟度に応じた『指導の個別化』を図るため、ICTを活用した習熟度別ドリルを導入する。同時に、子供が自らの学習状況を振り返り、自律的に学習を調整する『学習の個性化』を促すための振り返り時間を設定する。」
このように、キーワードを構成する要素を具体的に記述することで、用語に対する深い理解を証明できます。
② 「一体的な実現」という視点の保持
「個別最適な学び」と「協働的な学び」は、常にセットで語られるべき概念です。
表現例:
「個別最適な学びによって個々の資質・能力を育むとともに、それらを他者と共有し、多様な考えに触れる協働的な学びを一体的に実現することが重要である。」
このように、二つの概念の相乗効果を論理的に説明する構成を心がける必要があります。
2. 「個別最適な学び」を具体化する表現の型
「個別最適な学び」という言葉を具体例と結びつける際は、教師の「環境設定」と「見守り(アセスメント)」の視点を盛り込むことが説得力の源泉となります。
① 指導の個別化:子供の特性に応じた支援
記述のポイント:
教師が一方的に教えるのではなく、子供が自分のペースで学べる環境をどう作るかを記述します。
具体的なフレーズ:
「一人一台端末を活用し、子供が自分の習熟度に合わせた課題を選択できる時間を設ける。教師はその間、特定の困難を抱える子供に対して重点的な机間指導を行い、つまずきをその場で解消する支援を行う。」
② 学習の個性化:子供主体の学びの調整
記述のポイント:
子供が「自ら学ぶ」姿をどう引き出すかを記述します。
具体的なフレーズ:
「単元の導入時に学習のゴールを明確に示し、子供自身が自分の興味・関心に基づいて学習計画を立てる活動を取り入れる。毎時間の終わりに『何がわかり、何が課題か』を振り返ることで、次の学習への意欲を自己調整できる力を育む。」
3. 「協働的な学び」を具体化する表現の型
「協働的な学び」を論じる際、大学生がやりがちなのが「グループ学習をさせる」という形式的な記述です。
採点者が求めているのは、集団の中での「思考の深まり」をどう生み出すかという視点です。
① 多様な視点の融合
記述のポイント:
仲良く話し合うことではなく、異なる意見がぶつかり合い、新しい気付きが生まれるプロセスを記述します。
具体的なフレーズ:
「自分の考えを他者に説明する活動を通じ、自分とは異なる視点や発想に触れさせる。多角的な視点から課題を検討することで、一人では到達できなかった深い理解へと繋げる協働的な学びを展開する。」
② 集団としての解決
記述のポイント:
個の力を集団に還元し、集団で高め合う姿を記述します。
具体的なフレーズ:
「学級全体で一つの課題を解決する際、個々が調査した情報をクラウド上で共有し、可視化する。それらを整理・分析する過程を協働的に行うことで、集団としての最適解を導き出す力を養う。」
4. 文章の信頼性を高める「実感的」な表現術
論作文の説得力を高めるのは、専門用語だけではありません。
大学生ならではの「教育実習」や「ボランティア経験」に基づいた実感的な言葉が、キーワードに命を吹き込みます。
① 実体験をキーワードの「裏付け」にする
NG例:
「教育実習で個別最適な学びが大切だと感じた。」
合格例:
「教育実習中、算数の授業において一斉指導では理解が追いつかない子供の姿を目の当たりにした。この経験から、一人ひとりの認知特性に応じた個別最適な学びの提供が、誰一人取り残さない教育の第一歩であると確信した。」
このように、自分の経験を一般化し、最新の教育用語で再定義するプロセスが極めて重要です。
② 「教師の役割」を動詞で表現する
キーワードを名詞として置くだけでなく、教師の具体的なアクション(動詞)とセットにします。
動詞の例:
「引き出す」「支える」「繋ぐ」「見守る」「揺さぶる」。
「子供の主体的・対話的で深い学びを『引き出す』ために、教材の提示方法を工夫し、既習事項との矛盾を『揺さぶる』発問を行う」
といった表現は、現場での指導を具体的にイメージしていることを証明します。
5. 第9回のまとめ:キーワードは「論理」の結節点である
論作文におけるキーワードの役割は、あなたの主張を教育界の潮流に繋ぎ合わせる「結節点」です。
キーワードの定義を正確に理解し、構成要素(例:指導の個別化と学習の個性化)を使い分ける。
「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的なものとして論じる。
抽象的な用語の後には、必ず「月曜日の朝に教室でできること」を具体例として添える。
自分の経験(実習等)と最新の教育理論を、論理的な接続詞で結びつける。
用語に踊らされるのではなく、用語を自分の道具として使いこなす。
その姿勢が、採点者に「この学生は現場で任せられる」と思わせる最大の要因になります。
次回の連載からは、いよいよ後半戦、人物評価の核心である「面接対策」に入ります。
第10回:大学生が陥る「面接の罠」と克服法。学生気分の「受けオペ」を、社会人(教員)としての「対話」へアップデートする。
筆記試験を突破しても、面接で「学生っぽさ」が抜けずに評価を落とすケースは後を絶ちません。
教員としてふさわしい「対話」とは何かを詳しく解説します。
【今回の合格ワーク:キーワードの具体化トレーニング】
1. 「主体的・対話的で深い学び」を、あなたが担当する教科の授業に当てはめて、300文字程度の具体的な指導場面を記述してください。
2. 「チーム学校」という言葉を使って、学級担任と保護者、あるいは専門スタッフとの連携について、具体的な会話例を含めて記述してください。
3. 自分が書いた論作文を読み返し、教育用語が「単なる名詞」になっていないか、具体的な「子供の変容」が書かれているか確認してください。
論作文の技術は、思考の解像度を高める技術でもあります。
言葉の一つ一つに、あなたの情熱と論理を込めていきましょう。
河野正夫



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