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第10回 論作文を90分(60分)で仕上げる戦略的テンプレート:出題意図を読み解き、論理と具体例で説得力を高める方法

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 3 日前
  • 読了時間: 7分

第10回 論作文を90分(60分)で仕上げる戦略的テンプレート:出題意図を読み解き、論理と具体例で説得力を高める方法



【大学生のための、教採裏技講座】全20回



1.はじめに



教員採用試験における論作文は、多くの受験生にとって大きな試練です。


筆記試験の知識があっても、それを限られた時間内で文章としてまとめるには、別種のスキルが求められます。


論作文は単なる文章力を問うものではなく、教育観の一貫性、論理性、そして現場で活かせる実践力を総合的に評価する試験です。


さらに、時間制限が60分から90分と短いため、準備不足や迷いが生じると、文章が未完成のまま終わってしまいます。


そこで必要なのが、「あらゆるテーマに対応できる戦略的テンプレート」を持つことです。


テンプレートを用いれば、試験当日も焦らずに文章を構成でき、書き上げるスピードと質を両立できます。


本稿では、出題意図の読み解き方から段階的な構成法まで、実践的に解説します。



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2.論作文が評価される三つの観点



論作文では、次の三つの観点が特に重視されます。



第一に、課題理解力です。


出題テーマが何を問うているのかを正確に把握できるかが最初の関門です。


例えば「いじめ防止への取組」といったテーマでは、単なる現状説明ではなく、「教員としてどのように課題に対応するか」という実践的視点が求められます。


出題意図を外した作文は、それだけで評価が大きく下がります。



第二に、論理性です。


主張が感情的ではなく、筋道立てて展開されているかが問われます。


教育は公共性の高い営みであるため、根拠に基づく説明が不可欠です。


「私はこう思う」だけではなく、「なぜそう考えるのか」「それが教育的に妥当である理由」を示す必要があります。



第三に、具体性です。


理想論や抽象論だけでは説得力がありません。


教育実習での経験や授業の場面、ニュースで取り上げられた事例など、具体的なエピソードを盛り込むことで、主張に現実味と説得力が生まれます。


この三つの観点を満たす文章を書くことが、高得点への近道です。



3.出題意図を読み解く技術



試験当日、最初にすべきことはテーマ文の精読です。


テーマには必ず出題者の意図が隠されています。


それを誤解すると、努力が無駄になりかねません。



テーマ文を読む際は、三つの視点で分析します。



一つ目は「中心キーワード」を特定することです。


テーマに出てくる教育用語を一つひとつ確認し、それぞれの意味を整理します。



二つ目は「問題提起」を見抜くことです。


単なる説明ではなく、「なぜそれが課題なのか」「どんな現状が問題なのか」を意識します。



三つ目は「求められる立場」を理解することです。


受験者は教員としての立場で答える必要があります。


テーマが社会全体を扱っていても、学校現場での実践に落とし込むことが不可欠です。



この三つの分析を行うことで、論作文が的外れになるリスクを防げます。



4.時間配分の原則



60分から90分という限られた時間で論作文を書くには、時間管理が合否を左右します。


目安としては以下の流れが適切です。


最初の10分はテーマ文を分析し、構成を決定する時間に使います。


この段階で焦って書き始めると、途中で論理が迷走しやすくなります。


次の40分から60分で本文を書き上げます。


段落ごとに「導入」「主張」「根拠」「具体例」「結論」の役割を明確にし、構成に沿って淡々と進めます。


残り10分は必ず見直しに充てます。


誤字脱字の確認だけでなく、段落間の接続が滑らかか、論理の飛躍がないかもチェックします。


この三段階を習慣化しておくことで、試験当日も安定したパフォーマンスを発揮できます。



5.戦略的テンプレートの構造



ここからは、あらゆるテーマに対応できる汎用テンプレートを紹介します。

論作文は、次の五部(四段落)構成を基本に設計すると書きやすくなります。



第一段落(前半)は「導入」です。


テーマに関連する現状や課題を簡潔に提示し、問題意識を共有します。


ここでは抽象的な理念だけでなく、統計や教育現場での具体的な事例を一文挿入すると、説得力が増します。



第二段落(正確には、第一段落〈後半〉)は「主張」です。


自分が何を最も重視するのかを明確に宣言します。主張は一文で簡潔に表現し、それを本文全体の軸とします。



以上の第一段落(前半)と第二段落(正確には、第一段落〈後半〉)が、いわゆる、【序論】です。



第三段落と第四段落は「根拠と具体例」です。


(段落の数字は、一つ減じてもOKです。第三段落→第二段落、第四段落→第三段落のように。理由は、前述。)


理論的根拠と実践的事例を組み合わせて展開します。


たとえば、「ICT活用が重要である」という主張に対しては、学習指導要領や文部科学省の施策を根拠として示し、続けて教育実習での実体験やニュース事例を具体例として挙げます。


根拠と具体例が両輪となることで、文章の説得力が格段に高まります。



第三段落と第四段落が、いわゆる【本論】です。



第五段落は「結論」です。


主張を再確認し、試験官に印象的なメッセージを残します。


結論は簡潔で力強く、導入で提示した課題と対応していることが望ましいです。



この五部(四段落)構成を身につければ、テーマが変わっても迷わず対応できます。




6.論理を強化する三つの視点



文章を論理的に展開するためには、三つの視点を常に意識します。



第一は「因果関係」です。


現象と原因、原因と対策を明確につなげることが重要です。


たとえば、「不登校が増加している」という現象を述べたら、その原因を説明し、さらに対策を提示します。


この流れがないと、文章が単なる説明に終わってしまいます。



第二は「対比構造」です。


自分の主張を強調するために、対立する考え方を示し、それに対する自分の立場を明らかにします。


たとえば、ICT活用について「ICTを活用すべき」という立場と「活用しすぎると学習が浅くなる」という懸念を示し、その上で「バランスが重要」という自分の立場を提示すると、説得力が増します。



第三は「具体例への落とし込み」です。


理論だけでは抽象的になりがちです。具体的なエピソードを通して、主張を現場に落とし込むことで、実践力が伝わります。



7.論作文を差別化するポイント



多くの受験生が同じテーマで作文を書くため、内容が似通いがちです。


そこで差をつけるには、自分だけの視点を加えることが不可欠です。


教育実習での体験や、ゼミでの研究、地域活動など、自分が実際に経験したエピソードを盛り込みましょう。


単なる知識の羅列ではなく、経験と知識が結びつくことで、文章にオリジナリティが生まれます。


また、最新の教育時事を根拠に取り入れることも効果的です。


時事問題を文章に組み込むと、教育界の動向に敏感な受験者であることを示せます。


ただし、単なる知識披露にならないよう、必ず自分の主張と結びつけることが重要です。



8.見直しと仕上げの習慣



論作文は、書き上げて終わりではありません。


最後の10分を使って、文章を磨き上げましょう。


まず、誤字脱字や文法の誤りを修正します。


次に、段落ごとの接続が自然かを確認します。


「しかし」「したがって」などの接続詞が論理に沿って適切に使われているかを見直します。


最後に、導入と結論が対応しているかを確認します。


最初に提示した課題に対して、最後に明確な解決策を示せていれば、文章全体が一つのまとまりとして完成します。



9.まとめ



論作文は、教育観と実践力を評価する試験です。


限られた時間で高得点を取るには、出題意図を正確に読み解き、論理的に構成し、具体例で裏付けるという三段階が不可欠です。


五部構成のテンプレートを活用すれば、テーマが変わっても迷わず書き進められます。


さらに、自分の経験や教育時事を組み込むことで、他の受験生との差別化が可能になります。


論作文は一朝一夕で上達するものではありません。


日頃からテーマを見つけて短時間で骨子を作る練習を繰り返すことが、本番での安定したパフォーマンスにつながります。



次回は第11回「個人面接で差がつく『裏の評価基準』」と題して、面接官が見ている本当の評価ポイントを解説します。




河野正夫




 
 
 

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