top of page
検索

【大学生のための面接合格術】第6回:恩師からの影響

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 2 日前
  • 読了時間: 9分

【大学生のための面接合格術】


第6回:恩師からの影響



教員採用試験の面接において、



「あなたに影響を与えた恩師について教えてください」


「教師を目指すきっかけになった先生はいますか」



という質問は、定番です。



多くの受験者が、自分が出会った先生のエピソードを熱心に語ります。


しかし、この質問もまた、語り方を誤ると、せっかくのエピソードが評価に結びつかないことがあります。


今回は、大学生のみなさんが、恩師からの影響を教師としての未来につなげて語れるよう、具体的なポイントをお伝えしていきます。





1.面接官が恩師の質問で見ているもの



まず、面接官がこの質問で何を見ているのかを確認します。


面接官は、あなたの恩師がどんな素晴らしい人だったかを知りたいのではありません。


次の三つの視点で受験者を評価しています。



第一に、教育観の源泉です。


あなたが目指す教師像は、どんな出会いと経験から形づくられてきたのか。


教育観に「血の通った根拠」があるかどうかを見ています。



第二に、人を見る目です。


同じ先生に出会っても、その先生の何を学び取るかは人によって異なります。


表面的な印象ではなく、教師としての本質を見抜く目を持っているかどうかが評価されます。



第三に、未来への接続です。


恩師から学んだことを、自分はどのように発展させ、教師としての実践に生かしていくのか。


過去の思い出話で終わらず、未来の自分につなげて語れるかどうかが決定的に重要となります。



つまり、この質問も第2回「志望動機」で扱った原則と同じく、「過去語りではなく、未来語り」が評価の鍵を握ります。


恩師の話は、これからの自分の教育実践を語るための土台として位置づけてください。



2.「素敵な先生でした」では評価されない



よくある不十分な回答の典型を確認します。



「私の小学校の先生は、いつも笑顔で、子どもたちみんなに優しく接してくださる素敵な先生でした。私もそんな先生になりたいと思い、教員を目指しました」



この語り方は、内容そのものとしては、間違ってはいません。


しかし、「素敵」「優しい」「明るい」といった抽象的な形容詞を並べただけでは、面接官の心には残りません。


なぜなら、ほとんどの受験者が同じような形容詞で恩師を語るからです。


面接官が知りたいのは、その先生の「どのような行動・姿勢・教育観」が、あなたに「どのような影響」を与え、それを今後「どのような実践」につなげていくのか、という具体的な道筋です。


「素敵な先生でした」を、「○○な場面で○○のような姿を見せてくださり、私は○○という教育の本質に気づかされました」という具体性のある語りに置き換えてください。


具体的であればあるほど、面接官の心に届きます。



3.恩師から「何を」学んだかを掘り下げる



恩師の話を深めるためには、その先生から自分が学び取ったものを、教育観の言葉で表現する作業が必要となります。


次のような視点で、自分の体験を見つめ直してください。



視点①:教育観・教育理念



恩師は、教育について、子どもについて、どのような考え方を持っていたか。


言葉で語られたものだけでなく、日々の行動から伝わってきた信念は何か。



「どの子にも必ずよさがある」


「学ぶことの楽しさを伝えたい」


「失敗を責めずに、挑戦を励ます」



など、教育観の言葉で表現してみてください。



視点②:子どもとの関わり方



恩師は、子どもとどのように関わっていたか。


声のかけ方、聴く姿勢、叱り方、ほめ方、目線の高さ、距離感など、関わり方の具体的特徴を捉えてみてください。



視点③:授業づくり・指導の工夫



恩師の授業や指導には、どのような工夫があったか。教材選び、発問の仕方、子どもの意見の取り上げ方、学級全体の動かし方など、指導技術の側面から見つめてみてください。



視点④:教師としての生き方・姿勢



恩師は、教師としてどのような姿勢で仕事に向き合っていたか。


学び続ける姿、誠実さ、子どもの成長を喜ぶ姿、同僚との協働の姿など、教師としての全人格的なあり方を見つめてみてください。



この四つの視点で自分の体験を掘り下げると、「素敵」「優しい」という抽象表現を超えた、教育観の言葉が見えてきます。それを面接で語ってください。



4.具体的なエピソードで裏付ける



恩師から学んだことを抽象的に語るだけでは、説得力が出ません。必ず、具体的なエピソードで裏付けてください。


たとえば、「どの子にもよさがあるという教育観を学びました」と語るなら、それを裏付けるエピソードを添えます。



「私は中学生のとき、勉強にも部活にもうまく取り組めず、自信を失っていた時期がありました。そのとき担任の先生は、私の小さな変化や努力を見逃さず、廊下ですれ違うたびに具体的に声をかけてくださいました。テストの点数ではなく、私自身の取り組みを見てくださっていることが伝わり、自分にもよさがあるのかもしれないと思えるようになりました。この経験から、子ども一人ひとりの中にある可能性を信じ、小さな成長を見取って言葉にして返す教師でありたいと考えるようになりました」



このように、エピソードと教育観が一体となった語りができると、面接官に深く伝わります。


エピソードは長くなりすぎないように、要点を絞って語ってください。



5.「真似る」から「発展させる」へ



恩師からの影響を語るとき、もう一つ重要な視点があります。


それは、「恩師の真似をする」という発想から、「恩師から学んだことを発展させる」という発想へ移行することです。


「恩師のような教師になりたい」という語り方は、よく見られる表現ですが、注意が必要となります。


恩師がどれほど素晴らしい先生であっても、その先生は十年、二十年、あるいは三十年前の教育を実践していた方です。


教育を取り巻く環境は大きく変化しています。


一人一台端末、個別最適な学び、多様性への対応、外国にルーツを持つ子どもの増加、特別支援教育の充実、保護者対応の複雑化など、現代の教師には、当時とは異なる課題への対応が求められます。


ですから、面接官の前で語るべきは、「恩師のような教師になります」ではなく、「恩師から学んだ教育の本質を、現代の教育課題に合わせて発展させていきます」という姿勢です。


たとえば、次のような語り方が考えられます。



「恩師から学んだ『どの子にも必ずよさがある』という教育観を土台にしながら、現代の多様な子どもたちに対応するため、特別支援教育や個別最適な学びの視点を加え、より一人ひとりに応じた関わりができる教師を目指していきます」



このように、恩師から受け継いだものと、自分が新たに加えていくものの両方を語れると、教師としての成長への意欲が伝わります。



6.1分で語るための構成



恩師からの影響を1分で語る場合、伝えられる文字数は300字から320字となります。次の構成が効果的です。



第一文で、恩師から学んだ教育観を簡潔に述べます。


「私は、中学校時代の担任の先生から、どの子にも必ずよさがあるという教育観を学びました」


というように、抽象的な印象ではなく、教育観の言葉で結論を示します。



第二文から第三文で、その教育観の根拠となるエピソードを簡潔に述べます。


「先生は私の小さな努力を見逃さず、その都度具体的に声をかけてくださり、自分にもよさがあるのだと思えるようになりました」


というような、自分の体験を一筆書きで示します。



第四文で、その学びを現在の自分の教育観として位置づけます。


「この経験を通して、子ども一人ひとりのよさを見取り、言葉にして返すことの大切さを実感しました」



最後の一文で、未来の実践への接続を述べます。


「現代の多様な子どもたちに対応するため、特別支援教育の視点なども学びながら、一人ひとりのよさを伸ばす教師を目指していきます」というように、未来への接続で締めくくります。



この構成であれば、教育観・エピソード・現在の自分・未来の実践、という流れが自然に成立し、面接官に「過去の思い出を未来につなげられる人物」だと伝わります。



7.恩師がいない、思い当たらない場合



「私には特別な恩師と呼べる存在がいません」


「印象に残っている先生が思い出せません」


と感じる方もいるかもしれません。


その場合でも、心配する必要はありません。


次の二つの選択肢があります。



選択肢①:複数の先生から学んだことを統合して語る



一人の特別な恩師がいなくても、これまでに出会った複数の先生から、少しずつ学んできたことがあるはずです。


「特定の一人の恩師というよりも、これまでに出会った先生方それぞれから学んだことが、自分の教育観の土台になっています」


という前置きをしてから、複数の先生から学んだ要素を統合して語る方法があります。



選択肢②:大学の教授や教育実習でお世話になった先生から学んだことを語る



小中高の恩師にこだわる必要はありません。


大学の教授、ゼミの指導教員、教育実習で指導を受けた先生など、現在進行形で影響を受けている方を語ってもよいでしょう。


むしろ、大学生としては自然な選択となります。


「大学のゼミで○○について研究するなかで、指導教員の○○な姿勢から、教育者としてのあり方を学んでいます」


というような語り方ができます。



どちらの場合でも、影響を受けた内容を教育観の言葉で表現し、エピソードで裏付け、未来の実践につなげる、という基本構造は変わりません。



8.恩師を語ることは、自分を語ることである



最後に、恩師の話を語るときの心構えをお伝えします。


恩師の質問は、表面的には恩師についての質問ですが、本質的には自分自身についての質問となります。


なぜなら、同じ先生に出会っても、その先生から何を学び取るかは、受け手によって異なるからです。


あなたが恩師から「何を」学び取ったかは、あなた自身の感受性、価値観、関心の表れです。



ですから、恩師の話を語るときは、恩師の素晴らしさを語ろうとするのではなく、その恩師との出会いを通して見えてきた「自分自身の教育観」を語ってください。


恩師の話は、あなた自身の教育観を立体的に伝えるための媒介となります。


そして、忘れてはならないのは、教師は、自分が受け取ってきた教育を、次の世代の子どもたちへ手渡していく営みであるということです。


恩師から受け取ったものを、自分なりに発展させながら、目の前の子どもたちに手渡していく。


この営みの連続が、教育の歴史を支えてきました。


みなさんも、その大切な連続の中に、これから加わっていく存在です。


自分が受け取ってきたものを、感謝を込めて振り返り、それを次の世代にどう手渡していくかを、自分の言葉で語ってください。


その語りが、面接官の心を動かし、合格への扉を開くことを願っています。



次回は「大学で力を入れたこと」について、合格をつかむための具体的なアドバイスをお届けします。


一緒に取り組んでいきましょう。




河野正夫




 
 
 

コメント


bottom of page