【大学生のための面接合格術】(全20回連載)第7回:大学で力を入れたこと
- 河野正夫
- 1 日前
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【大学生のための面接合格術】(全20回連載)
第7回:大学で力を入れたこと
教員採用試験の面接において、
「大学で力を入れたことを教えてください」
「学生生活で最も打ち込んだことは何ですか」
という質問は、必ずと言ってよいほど問われる定番です。
この質問は、学生時代の取り組みを通して、受験者の人物像、行動力、学ぶ姿勢、そして教師としての適性を見極めるための、極めて重要な問いとなります。
今回は、大学生のみなさんが、自分の大学生活を教師としての資質に結びつけて語れるよう、具体的なポイントをお伝えしていきます。

1.面接官がこの質問で見ているもの
まず、面接官がこの質問を通して何を見ているのかを確認します。
「力を入れたこと」と聞いて、輝かしい成果や派手な経歴を求めていると考えるのは誤解です。
面接官は次の四つの視点で評価しています。
第一に、主体性と行動力です。
大学生活という、自由度の高い時間を、自分の意志でどう使ってきたか。
受け身ではなく、自分から目標を立てて行動できる人物かどうかを見ています。
第二に、継続する力です。
途中で投げ出さず、ある程度の期間、一つのことに取り組み続けてきたか。
教師の仕事は、子どもの成長を信じて関わり続ける、地道で長期的な営みです。
継続性そのものが、教師としての資質として評価されます。
第三に、振り返る力です。
取り組んできたことから、何を学び、どう成長したか。
経験を経験のままで終わらせず、自分の中で意味づける力があるかどうかを見ています。
第四に、教師としての資質への接続です。
その経験を、教師としての仕事にどう生かしていくのか。
過去の取り組みを、未来の教育実践につなげて語れるかどうかが評価されます。
つまり、この質問でも「経験そのもの」ではなく、「経験から何を学び、教師としてどう生かすか」が問われています。
地味な取り組みでも、語り方次第で十分に評価されます。
2.「すごい経験」を持っていなくても語れる
大学生のみなさんが、この質問に対してよく抱く悩みがあります。
「全国大会に出たわけでもない」
「リーダーを務めたわけでもない」
「特別な実績はない」
というものです。
こうした思いから、自信を失ったり、無理に話を盛ろうとしたりする人が少なくありません。
しかし、面接官は「すごい人」を採用したいのではありません。
「教師として誠実に取り組める人」を採用したいのです。
派手な実績がなくても、自分が真剣に向き合ってきたことを、自分の言葉で語れれば、面接官の心に届きます。
たとえば、次のような取り組みも、語り方によっては高評価につながります。
ゼミでの研究、
卒業論文の執筆、
教員免許取得のための科目履修、
教育実習、
ボランティア活動、
サークル活動、
部活動、
アルバイト、
留学、
資格取得、
語学学習、
地域活動への参加、
読書、自主的な勉強会
など。
特別な実績ではなく、「自分なりに真剣に取り組んだもの」を選んでください。
話を盛る必要はありません。
むしろ、等身大の取り組みを誠実に語る方が、面接官の信頼を得られます。
3.「力を入れたこと」を選ぶ三つの基準
複数の取り組みのうち、どれを語るかを選ぶ際の基準を示します。
次の三つの観点から選んでください。
基準①:教師の仕事に結びつく経験を選ぶ
可能であれば、教師としての資質や仕事に結びつけやすい経験を選んでください。
子どもと関わった経験、学び続けてきた経験、多様な人と協働した経験、地道に取り組み続けた経験などが望ましい選択となります。
教育系の経験が一番ですが、非教育系の経験でも、教師の仕事への接続を語れれば問題ありません。
基準②:自分の言葉で具体的に語れるものを選ぶ
立派に見える経験よりも、自分が本当に深く関わり、自分の言葉で語れる経験を選んでください。
表面的な情報しか語れないものを選ぶと、面接官の質問に答えられなくなり、評価が大きく下がります。
「あなたはなぜそれに取り組んだのですか」
「どんな困難がありましたか」
「具体的にどう工夫しましたか」
といった追加の質問に、いくらでも答えられるテーマを選んでください。
基準③:継続して取り組んできたものを選ぶ
短期間で終わった取り組みより、ある程度の期間、継続して取り組んできたものを選ぶ方が、説得力が出ます。
一年以上、できれば二年以上継続している取り組みがあれば、それを優先してください。
継続性そのものが、教師としての資質を裏付ける根拠となります。
4.語るときの基本構成
「大学で力を入れたこと」を語る際の基本構成を示します。次の流れで組み立ててください。
第一の要素:
結論として、何に力を入れてきたか
「私は大学で、○○に力を入れて取り組んできました」と、最初に明確に述べます。
何をしてきたかが冒頭で示されないと、聞き手は理解しづらくなります。
第二の要素:
取り組み始めた目的・動機
なぜそれに取り組み始めたのか、目的や動機を簡潔に述べます。
「○○という問題意識から」
「○○な力を身につけたいと考えて」
というような、自分の主体性が伝わる言葉で示してください。
「何となく始めた」「友人に誘われて」だけでは、主体性が伝わりません。
第三の要素:
直面した課題と、自分の工夫
取り組みの過程で、どのような課題に直面し、それをどう乗り越えてきたかを述べます。
順調だった話より、課題と工夫の話の方が、面接官の心に残ります。
「最初は○○がうまくいかなかったが、○○のように工夫することで、少しずつ前に進めるようになった」という、試行錯誤の過程を語ってください。
第四の要素:
取り組みから得た学び
その経験を通して、自分が何を学んだかを述べます。
スキルや知識だけでなく、人としての成長、価値観の深まり、ものの見方の変化などにも触れてください。
「○○な力を身につけた」
「○○の大切さを実感した」
「○○についての見方が変わった」
など、自分の中の変化を表現します。
第五の要素:
教師としての仕事への接続
最後に、その学びを教師としてどう生かしていくかを述べます。
ここが最も重要な部分となります。
「この経験で得た○○を、子どもとの関わりに生かしていきたい」
「○○な姿勢で、教師としての仕事に向き合っていきたい」
と、未来の教育実践への接続で締めくくります。
この五つの要素を、1分以内の300字から320字に収まるよう、簡潔に構成してください。
5.具体的なテーマ別の語り方の例
代表的なテーマについて、語り方の方向性を示します。
★ゼミ・卒業論文
「ゼミで○○について研究を続けてきました。テーマを設定する段階で、自分の問題意識を言葉にすることに苦労しましたが、指導教員や仲間との対話を重ねるなかで、少しずつ研究の軸が見えてきました。文献を読み込み、自分の考えを論文として組み立てる過程で、物事を多角的に捉える力と、根拠に基づいて主張を組み立てる力が身につきました。この力を、子どもにも、自分の頭で考え、自分の言葉で表現することの大切さを伝える教師の仕事に生かしていきたいと考えています」
★教員免許取得・教育実習
「私は教員免許の取得に向けて、教職科目を計画的に履修し、教育実習にも全力で取り組んできました。実習では、自分が想定していた授業と、実際の子どもの反応との隔たりを実感し、教えることの難しさと面白さを同時に学びました。指導教員からの助言を受けながら、教材研究を深め、子どもの実態に合わせた授業づくりを試みた経験は、これからの教師としての出発点となります。実習で得た学びを土台に、現場で学び続けていく姿勢を大切にしていきたいと考えています」
★サークル・部活動
「私は大学で○○のサークル活動に四年間取り組んできました。仲間と一つの目標に向かう過程で、意見の対立や、思うようにいかない時期も経験しました。そのなかで、相手の立場を尊重しながら自分の考えを伝えること、地道に練習を積み重ねることの大切さを学びました。多様な仲間と協働してきた経験は、職員室での同僚との連携や、学級づくりにも生かせると考えています」
★ボランティア・学習支援
「私は地域の学習支援ボランティアに三年間継続して参加してきました。多様な背景を持つ子どもたちと関わるなかで、一人ひとりの学習のつまずきが異なること、関わり方を工夫する必要があることを実感しました。子どもの話を最後まで聴くこと、小さな成長を見取って言葉にして返すことを意識して続けてきました。この経験を、一人ひとりに応じた関わりを大切にする教師としての仕事に生かしていきたいと考えています」
★留学・語学学習
「私は大学二年生のときに○○ヶ月間の留学を経験し、現地の学校で異文化の中で学びました。言葉も文化も異なる環境で、自分から働きかけることの大切さと、多様な価値観を受け入れる姿勢を身につけました。日本の学校にも、外国にルーツを持つ子どもが増えています。自分の経験を、多様な背景を持つ子どもたちを支える教師の仕事に生かしていきたいと考えています」
これらは方向性の例ですので、自分の経験に応じて表現を調整してください。
6.語るときに避けたい三つのこと
最後に、この質問で陥りがちな失敗を三つ示します。
避けたいこと①:
複数のテーマを並列に語る
「私は大学で、ゼミと、サークルと、ボランティアと、アルバイトに力を入れてきました」
というように、複数のテーマを並べてしまうと、どれも深まらず、印象が薄くなります。
1分という時間では、一つのテーマを掘り下げる方が、はるかに評価されます。
複数の経験がある場合は、最も深く語れるものを一つ選んでください。
避けたいこと②:
成果の自慢で終わる
「全国大会で○○位になりました」
「○○の賞をいただきました」
というような、成果の自慢だけで終わる語り方は、面接官の心に残りません。
成果の事実を述べることは構いませんが、それよりも、その過程で何を学び、教師の仕事にどう生かすかに、時間を多く割いてください。
避けたいこと③:
学業を語らない
教員採用試験の受験者として、学業についての言及が一切ないのは不自然です。
サークルやアルバイトを中心に語る場合でも、
「学業との両立を意識しながら」
「学業を最優先にしたうえで」
というような言葉を、自然に織り込んでください。
教員免許取得のための学びや、自分の専門教科の学びについて触れられると、学生としての本分を踏まえた人物だと伝わります。
7.大学生活全体を振り返る視点
「大学で力を入れたこと」を語ることは、自分の大学生活を振り返ることでもあります。
面接対策のためだけでなく、自分がこの四年間で何を積み上げてきたかを、改めて見つめ直す機会としてください。
一見、地味で目立たないように見える日々の積み重ねも、振り返ってみれば、確かに自分を形づくってきたものとして見えてきます。
授業に真面目に出席してきたこと、レポートに丁寧に取り組んできたこと、友人との対話を大切にしてきたこと、家族との関係を保ち続けてきたこと、こうした目立たない営みも、立派な大学生活の一部です。
派手な経験を持っていないと自信を失う必要はありません。
自分が大切にしてきたことを、自分の言葉で誠実に語ることが、面接官の心に最も届きます。
みなさんの四年間が、教師としての未来の土台となることを信じて、自信を持って語ってください。
次回は「教育時事」について、合格をつかむための具体的なアドバイスをお届けします。
一緒に取り組んでいきましょう。
河野正夫
レトリカ教採学院(Academia Rhetorica)


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