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第6回 講師経験・校務分掌経験の言語化・ストーリー化の技術

  • 執筆者の写真: 河野正夫
    河野正夫
  • 1 日前
  • 読了時間: 5分

第6回 講師経験・校務分掌経験の言語化・ストーリー化の技術


<教員採用試験 面接合格講座(連載全30回)>



1.はじめに


講師経験や校務分掌経験は、教員採用試験の面接において極めて大きな武器となります。


大学生が教育実習や部活動経験などを材料に語るのに対し、講師経験者はすでに学校現場で職務を担った実績を語れる点で大きな優位性を持っています。


しかし、その経験を単に「やってきたこと」として羅列するだけでは、面接官の心には響きません。


重要なのは、それらの経験を「ストーリー」として言語化し、教育観や人物像を一貫して伝えることです。


本稿では、講師経験・校務分掌経験を戦略的にストーリー化する方法について、アカデミックな視点から整理します。



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2.経験を言語化する意義



(1)経験を意味づける作業


教育現場での経験は膨大であり、そのままでは面接官に伝わりにくいものです。


言語化とは、経験を「意味づけ」し、他者に伝わる形に変換する作業です。


面接官は単なる事実ではなく、「その経験を通じて何を学び、今後の教育にどう活かすのか」を重視します。



(2)面接評価基準との接続


多くの教育委員会は「人物評価」「教育観」「協調性」「課題解決力」を基準にしています。


経験を語る際は、これらの評価項目に結びつけることで説得力が増します。


たとえば、校務分掌の中で同僚と意見の違いを調整した経験を語る場合、それは「協調性」や「対人関係力」の証明となります。



(3)「体験談」から「教育者としての成長」へ


経験をそのまま並べると単なる体験談になります。


これを「教育者として成長する過程」として再構成することが、言語化の最大の意義です。



3.ストーリー化の基本枠組み


経験を語る際には、論理的で簡潔な構造を用いることが効果的です。


特に有効なのは「STAR法」です。



(1)Situation(状況)


経験の背景や文脈を簡潔に説明します。


例:


「私は講師として学級担任を任されましたが、学級には不登校傾向の児童がいました」



(2)Task(課題)


その場面で直面した課題を示します。


例:


「児童が安心して登校できるように支援することが課題でした」



(3)Action(行動)


自分が具体的に取った行動を述べます。


例:


「スクールカウンセラーと連携し、家庭訪問を行い、学級での居場所づくりを工夫しました」



(4)Result(結果)


その行動の成果や学びを語ります。


例:


「最初は週に数回の登校でしたが、徐々に出席が安定し、クラスの友達との関わりも増えました。この経験から、チームで支える教育の大切さを学びました」



このように整理することで、単なる経験が「成長を示すストーリー」に変わります。



4.講師経験のストーリー化の具体例



(1)学級担任経験


学級担任を務めた場合は、学級経営の工夫や児童生徒との関係づくりを具体的に語ることができます。


例えば「学級会活動で子どもの主体性を引き出した経験」を通じて、自分の指導観を示せます。



(2)授業改善の経験


講師は授業を日々実践する立場にあります。


「授業中に集中できない児童が多かったため、板書を見直し、発問を工夫した」といった改善経験を語れば、指導力と自己研鑽の姿勢を伝えられます。



(3)児童生徒指導の経験


トラブル対応や生活指導の経験は、教員としての即応力を示します。


特に「どのように冷静に状況を把握し、チームで解決にあたったか」を明確にすると評価が高まります。



5.校務分掌経験のストーリー化の具体例



(1)分掌業務を通じた協働


例えば「生徒会担当として学校行事の企画運営に関わり、同僚や保護者と協力して成功させた経験」を語ることで、協調性や調整力を示せます。



(2)校務改善への取り組み


「教務部で成績処理の効率化を提案し、ICTを導入して業務時間を削減した」といった事例は、課題解決力や改善意識を伝えるのに有効です。



(3)学校全体への視野


分掌経験を通じて「学年・学校運営の一端を担った」という視点を強調すると、単なる授業担当者にとどまらない広い視野を示せます。



6.戦略的に語る際の留意点



(1)「羅列」ではなく「選択」


経験が多いほど、すべてを語りたくなりますが、面接時間は限られています。


教育観や強みと結びつくエピソードを選び、絞り込んで語ることが重要です。



(2)一貫性を持たせる


個人面接、集団討論、模擬授業の全てにおいて「自分はこういう教育者である」という像を一貫して示す必要があります。


経験の選び方もその一貫性を意識してください。



(3)改善努力を強調する


失敗体験や課題に直面した経験を語る場合は、必ず「改善努力」とセットにします。


「課題→努力→成長」という流れを明確にすることで、面接官の共感を得られます。



7.まとめ


講師経験や校務分掌経験は、受験者が他の学生受験者と差別化できる大きな強みです。


ただし、それをただ「やってきたこと」として述べるのでは不十分です。



☆経験を言語化し、意味づけること


☆STAR法などの枠組みでストーリー化すること


☆面接官の評価基準と接続させること


☆成功体験だけでなく、課題と改善努力を誠実に語ること



これらを徹底することで、講師経験や校務分掌経験は、単なる事実ではなく「教育者としての成長を示す物語」へと昇華します。


面接官はその物語を通じて、「この人はすでに現場で学び続けている」と確信し、採用後の活躍をイメージすることができます。




河野正夫



 
 
 

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