【大学生のための面接合格術】第3回:長所・短所
- 河野正夫
- 1 時間前
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【大学生のための面接合格術】
第3回:長所・短所
教員採用試験の面接で、長所と短所は必ずと言ってよいほど問われる定番の質問です。
定番であるがゆえに、受験者の答え方には一定のパターンが定着しており、面接官は同じような回答を一日に何十回も聞くことになります。
今回は、大学生のみなさんが、ありきたりな回答から抜け出し、面接官の心に残る長所・短所の語り方を身につけられるよう、具体的なアドバイスをお伝えしていきます。

1.長所・短所で面接官が見ているもの
まず、面接官がこの質問を通して何を見ているのかを確認します。
長所・短所の質問は、単に受験者の性格を知るためのものではありません。
三つの視点から評価が行われています。
第一に、自己分析力です。
自分自身を客観的に把握できているか。
人間は、自分のことを正しく理解することが最も難しいと言われます。
教師は、子ども一人ひとりを的確に見取る職業ですから、自分自身を見取れない人物は、子どもを見取ることもできないと判断されます。
第二に、教師としての適性です。
長所が教師の仕事に生かせるものか。
短所が教師として致命的なものではないか。
この適性判断が常に背景にあります。
第三に、成長可能性です。
短所を自覚したうえで、それをどう改善しようとしているか。
教師は学び続ける職業ですから、自分の課題を直視し、改善に取り組む姿勢が求められます。
この三つの視点を踏まえると、長所・短所の質問は「あなたは教師として信頼できる人物ですか」という根源的な問いに対する答えを、間接的に求めていることになります。
2.長所は「教師として生かせる強み」を語る
長所を考えるときの大原則は、教師という仕事の文脈で生かせる強みを選ぶことです。
「明るい」「優しい」「面倒見がよい」といった抽象的な性格特性を述べるだけでは不十分です。
それが教師の職務にどう結びつくのかを明確にする必要があります。
教師として高く評価される長所には、たとえば次のようなものがあります。
★人の話を丁寧に聴く力
教師の仕事は、聴くことから始まります。
子どもの声、保護者の声、同僚の声を丁寧に受け止める力は、信頼関係の基盤です。
聴く力を長所とする場合、「相手の言葉の奥にある気持ちまで受け止めようと意識している」といった、深さのある表現にすると説得力が増します。
★粘り強さ
教育の成果はすぐには現れません。
子どもの成長を信じて関わり続ける粘り強さは、教師に不可欠な資質です。
学業、部活動、ボランティア、研究活動などで、長期にわたって取り組み続けた経験を根拠にできると、説得力が高まります。
★多様な人と協働できる力
学校は、年齢も立場も価値観も異なる多様な大人が協働する職場です。
サークル、ゼミ、アルバイト、ボランティアなどで、多様な仲間と協力して何かを成し遂げた経験を持つ方は、これを長所として語れます。
★学び続ける姿勢
教員養成課程で学んできた大学生にとって、これは自然な強みです。
「自分の知識や技能を磨き続けることに喜びを感じる」という姿勢は、これからの時代の教師像と完全に重なります。
★冷静に状況を分析できる力
学校現場では、感情的になりがちな場面が多々あります。
そこで一歩引いて状況を見渡せる力は、若い教師には特に評価されます。
長所を語るときは、必ず根拠となる経験を添えてください。
「私の長所は粘り強さです」だけでは弱いです。
「四年間続けた○○の活動を通して、結果が出ない時期にも諦めずに取り組み続ける姿勢を身につけました」というように、具体的な経験で裏付けることで、長所が血の通ったものになります。
そして、最後に必ず教師の仕事に結びつけてください。
「この粘り強さを生かして、子どもの成長を信じて関わり続ける教師を目指していきます」というように、未来の教育実践につなげる一文があると、長所の語りが完結します。
3.短所の語り方が合否を分ける
長所以上に、短所の答え方で大きな差がつきます。短所には三つの条件があります。
条件①は、教師としての適性に致命的な疑いを生じさせないこと。
「短気で怒りっぽい」
「人の話を聴くのが苦手」
「飽きっぽい」
といった短所を正直に語れば、教師としての適性そのものを疑われます。
条件②は、改善に向けて取り組んでいる姿勢を示せること。
短所を述べて終わりではなく、その短所をどう自覚し、どう改善しようとしているかまで語る必要があります。
条件③は、ありきたりでないこと。ここが今回、最もお伝えしたい点です。
4.「〜しすぎる」型の短所が陥る落とし穴
短所として最も多く語られるのが、「〜しすぎる」という表現です。
具体例を挙げます。
「一つのことに集中しすぎてしまう」
「時間をかけすぎてしまう」
「人のことを気にしすぎてしまう」
「考えすぎてしまう」
真面目すぎる」
責任感が強すぎる」
「相手に気を遣いすぎる」
これらの「〜しすぎる」型の短所は、受験者の九割以上が選びます。
なぜなら、面接対策本やインターネット上の情報で、「短所は裏返せば長所になるものを選びましょう」と繰り返し書かれているからです。
確かに、この型を選べば、短所のように見えて実は長所とも取れるため、人間性や教師としての適性を疑われるリスクは下がります。
形式的には条件①を満たします。
しかし、面接官の側から考えてみてください。
一日に何十人もの受験者と面接し、その全員から「〜しすぎる」という短所を聞かされる面接官は、どう感じるでしょうか。
「またこの型か」
「また面接対策本通りの答えか」
と、内心ため息をつくことになります。
つまり、「〜しすぎる」型の短所は、安全ではあるけれども、面接官の心には何も残らない回答になります。
むしろ、「この受験者は、面接対策本の通りに答えているだけで、自分自身を本気で見つめていないのではないか」という疑念を生む危険すらあります。
教員採用試験は、横並びの受験者のなかから選ばれる競争試験です。
何も残らない回答は、それ自体が大きな失点になります。
5.「〜しすぎる」型から抜け出す三つのアプローチ
それでは、どのような短所を語ればよいのか。三つのアプローチを示します。
アプローチ①:具体的な行動傾向として語る
抽象的な性格特性ではなく、具体的な行動の癖として短所を述べる方法です。
たとえば次のような表現になります。
「準備に時間をかける一方で、見切り発車で動き出すことが苦手で、周囲の動きに遅れることがあります」
「相手の意見を尊重するあまり、自分の意見を述べる場面で遠慮してしまう傾向があります」
「物事を構造的に整理することは得意ですが、雰囲気や場の空気を読み取ることに鈍いところがあります」
具体的な行動の癖として語ると、自己分析の解像度が高いことが伝わります。
「〜しすぎる」のような抽象的な型からも自然に距離を取ることができます。
アプローチ②:得意・不得意の対比で語る
「○○は得意ですが、○○は苦手です」という対比の構造で語る方法です。
たとえば次のような表現です。
「個別に子どもと関わることには自信がありますが、大勢の前で堂々と話すことには、まだ緊張が残ります。教育実習でも、個別指導の場面では子どもとの関係を築けた一方、全体への指示の場面では声が小さくなる癖が出てしまいました」
このように対比で語ると、自分の長所と短所の関係が明確になり、自己分析の深さが伝わります。
教育実習やボランティアなどの具体的な場面で短所が現れたことを述べると、さらに説得力が増します。
アプローチ③:克服のプロセスを中心に語る
短所そのものよりも、それを自覚してから克服に取り組んでいる過程を中心に語る方法です。
「以前は、自分の意見を主張することに苦手意識がありました。ゼミでの議論の場で発言できず、自分の考えを伝える機会を逃してしまうことがあったからです。この課題を自覚してから、まず自分の考えを文章で整理してから議論に臨むようにし、少しずつ発言の機会を増やしてきました。今では、ゼミの場で自分の意見を述べられるようになっています。さらに改善が必要な点ですので、教師になってからも、職員会議や保護者会の場で堂々と発言できるよう、努力を続けていきます」
このように、短所の自覚から改善の現在進行形までを一貫して語ると、成長可能性の高さが強く伝わります。
短所そのものは比較的軽いものでも、語り方の質で大きな差がつきます。
6.大学生だからこそ語れる短所
大学生のみなさんには、年齢や立場に即した短所の語り方があります。
「現場経験が乏しい」「指導経験が不足している」といった、経験不足からくる短所は、若い受験者だからこそ正直に語れる内容です。
「教育実習以外の現場経験が限られているため、多様な子どもへの対応について、まだ自分のなかに引き出しが少ないと感じています。だからこそ、四月からは、現場で出会う一人ひとりの子どもから学ぶ姿勢を大切にし、ベテランの先生方から積極的に学んでいきたいと考えています」
このような語り方は、講師経験者には決してできません。
大学生の謙虚さと、これから学んでいくという前向きな姿勢は、面接官に好印象を与えます。
ただし、「経験不足」を強調しすぎると、教師としての準備不足を露呈することになりますので、必ず学んでいく姿勢とセットで語ってください。
7.長所と短所のバランス
長所と短所をどちらも問われる場合、両者のバランスにも注意が必要です。
長所と短所が無関係な性格特性として並んでいると、自己分析の一貫性が感じられません。
たとえば、長所を「粘り強さ」、短所を「決断に時間がかかる」とするように、長所と短所が同じ性質の裏表であることを示すと、自己分析の深さが伝わります。
「物事を粘り強く考え続ける一方で、決断を急ぐ場面では時間がかかってしまう」という構造であれば、一貫した人物像が浮かび上がります。
ただし、これも型として使いすぎると不自然になります。あくまで自分の本当の姿を反映した語りであることが前提です。
8.短所を語るときの心構え
最後に、短所を語るときの心構えをお伝えします。
短所は、隠すものではなく、向き合うものです。
完璧な人間など存在しません。
面接官が知りたいのは、完璧な人物かどうかではなく、自分の不完全さを直視し、誠実に向き合える人物かどうかです。
短所を正直に認められる人ほど、現場に出てから成長します。
逆に、短所を取り繕う人は、現場で課題に直面したときに、それを認められず、改善の機会を失います。
教師として長く成長し続けられるのは、自分の弱さを直視できる人です。
その意味で、短所を語る場面は、自分自身の人間性を示す貴重な機会となります。
背伸びをせず、自分の本当の課題と向き合った言葉を、自分の言葉で語ってください。
面接官は、その誠実さを必ず受け止めます。
長所と短所の質問は、定番だからこそ、受験者の本気度が試されます。
面接対策本通りの答えで済ませるのか、それとも自分自身と真剣に向き合った言葉で答えるのか。
その違いが、合否を分けます。
みなさんが、自分自身の本当の強みと課題を見つめ、それを誠実に語れるよう、自己分析を深めていってください。
次回は「教諭になって実践してみたい取り組み」について、合格をつかむための具体的なアドバイスをお届けします。
一緒に取り組んでいきましょう。
河野正夫


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